第十回 祝・横綱朝青龍全勝優勝!


平成十六年大相撲初場所・横綱朝青龍が全勝優勝を果たした!

これは朝青龍自身五度目の優勝であり、東京場所四連覇という快挙でもある。

今場所の朝青龍は本当に強かった。まったく隙がなく、腰の備えも磐石だった。

立ち合いの踏み込みも鋭く、四肢の動き全てに流れがあり無駄がなかった。

もはや大関陣との実力差が大きく開いてしまったともいえる。

そんな今場所の横綱の全取組について私なりにコメントをしてみた。


初日:○朝青龍(寄り切り)栃乃洋●

初日から実力者栃乃洋との対戦だったが、廻しを取るのが速かった。本当に速い、巧い、力強い。

二日目:○朝青龍(寄り切り)高見盛●

今場所から締め込みを新しくした高見盛に対し、前日に「明日お祝いしてやるよ」と軽口を言っていためどんな荒技が出るのか注目の的だったが実際始まってみると何のことはなかった。
横綱の激しくかつ安定した相撲。

三日目:○朝青龍(寄り切り)北勝力●

やはり北勝力では実力から言っても横綱に対抗しようがないね。連チャンで吊り落としを喰らわなかっただけマシか。
ていうか立ち合い改善しようよ、リキ関。

そうそう、時々館内放送担当の行司さんで、彼の四股名を「ほくとりき」と発音している人がいますが正しくは「ほくとうりき」ですよ。「貴闘力のような激しい突き押しが出来るように」と願いを込めてつけた四股名なんですから。OK?

四日目:○朝青龍(押し出し)若の里●

怪力若の里と四つに組んではまずいという経験上、徹底して喉輪だけで突き切った横綱。さすが。

五日目:○朝青龍(掬い投げ)岩木山●

過去の対戦では立ち合いの圧力で横綱を土俵際まで持って行ったこともある岩木山。しかし実力では叶わず横綱に土を付けたことはない。
今回の対戦は立ち合いでの岩木山の勢いを利用しての横綱の掬い投げ。

六日目:○朝青龍(下手捻り)旭天鵬●

下手捻りと言うより鯖折りに近い格好になった。やはり四つに組んでは不利と思ったのか素早い技だった。

七日目:○朝青龍(突き出し)玉乃島●

ていうか今場所玉乃島が関脇に昇進したのって番付の昇降上たまたまなんじゃ…?

中日:○朝青龍(押し出し)旭鷲山●

よりによって天覧相撲の日にこの割りを組んだ協会も罪なことをすると思った。
しかし横綱は曲者を相手に立ち合いいきなり攻めずに見て行った。その為何も出来なかった曲者旭鷲山。哀れ。

九日目:○朝青龍(寄り切り)時津海●

右が入ってから寄り切る時の腰の備えが素晴らしい。
相撲巧者時津海をものともしない。

十日目:○朝青龍(吊り落とし)琴光喜●

この日は四つに組んでから珍しく時間が掛かってるな、と思っていたらやっぱり吊り落としに行った。だが一度目は不発。
二度目には豪快な吊り落としが決まった。モンゴル相撲の先生の大技で、成功させた横綱は満足そうだった。
こういう見応えのある相撲が増えれば相撲人気の復権につながる。
しかも同じ吊り落としでも叩きつけるのではなく、相手が強く落下しない様に廻しを引いていた。
「こんな大技に出たのに手心を加える余裕があったね」と解説の北の富士勝昭氏も絶賛。

十一日目:○朝青龍(寄り切り)垣 添●

もはやこの快進撃では横綱は三役陣にはもう負けないと皆が思っていたが、初顔の垣添(東前頭五枚目)戦。どうなるか注目が集まっていた。
解説の錣山親方や舞の海秀平氏が仰っていた通り横綱は今まで自分より小さい相手と相撲を取ったことがほとんど無い為、一体どんな展開になるのか楽しみだった。
もし横綱相手に何かできるとしたらこの垣添しかいない、と私も思っていたが珍しく頭からガツンとぶつかっていった横綱の圧勝。
これで「全勝優勝」が見えてきた。

十二日目:○朝青龍(押し出し)土佐ノ海●

うーん、最近土佐ノ海の圧力って空回り気味ですからねー。

十三日目:○朝青龍(送り出し)魁 皇●

手繰ったり足を飛ばしたりととにかく次から次へと休みなく技を仕掛ける横綱。これでは魁皇もなす術が無い。
「安定した横綱相撲」もいいが、やはりファンが観たいのは「鮮やかで速い朝青龍相撲」だね。

十四日目:○朝青龍(押し出し)千代大海●

昭和39年の栃ノ海−大鵬、栃ノ海−豊山の26本の懸賞を上回る、史上最多の27本(手取りで81万円)の懸賞が掛かった今場所の大一番。
お互い烈しい突き合いになったが制したのは横綱。
千代大海の相撲も悪くなかったが決定的な違いは横綱のほうが腰が安定しており、なおかつ足でしっかり土俵の砂を噛んでいた、というところであろう。
それにしてもあのまぶたから血を流しながらの笑顔・ガッツポーズはとても印象に残る。
あの貴乃花の「鬼の形相」以上に心に残りそうだ。

千秋楽:○朝青龍(押し出し)栃 東●

あのー、栃東関。もうちょっといいとこ見せてもよかったんじゃ…?
いくら横綱に素早くいなされたからといって、ああも無抵抗というのは悲しい。
しかし何というか、綱とりが掛かっていた場所とはいえ、謙虚を通り越して少し卑屈じゃありませんこと、大関?
今度からはもうちょっと自信を持って激しく気合で行って下さい。
それはさておき、横綱、本当に全勝優勝おめでとうございます。


今場所の横綱が特に今までと違っていたこと。

まず相手によってきちんと考えて相撲を変えていたところである。
今まで横綱は立ち会い受けてからの双差し速攻、を売りにしていたが今場所は自分らしい突き切る相撲が多かった。また垣添戦では新鋭の挑戦を真っ向から受けようと頭でぶつかって行ったし、魁皇戦では本当に珍しく、出島のように諸手をしっかりと付けた立ち合いで望んだ。
「横綱は相手の出足をいつでも受けなければ」という固定観念に捕われず、よく考えて自分の相撲を取りきる横綱は本当に強く、生き生きしていた。

次に。
下した相手に対し手を差し伸べる場面が実に多かったこと。
とはいえ今までまったくそういう場面がが無かった訳ではないが、どちらかというと「ダメ押し・壊し屋の朝青龍」という悪いイメージが先行していた。
ところが今場所は初日から相手に手を貸し、因縁の旭鷲山戦でも過去のことなど全て清算するかのように手を差し伸べ、初顔の垣添戦では、わざわざ横綱自ら土俵下に降りていって垣添を助け起こした。この他にも今場所はほぼ毎日横綱は敗者に手を差し伸べていた。勝負は本気でぶつかり、勝負が済んだら相手を認めることが何より大切なのである。
下した相手に対し「まだまだだね」などとほざいてるそこの君、横綱朝青龍関を見習うよーに。何だったらその根性鍛え直してもらうか?(誰とは言わんが…)

さらに強く印象に残ったのは、表彰式のインタビューの時、横綱が四方の客席に一回一回向き直り、丁寧に頭を下げていたことである。
これにはもう、感動である。今までこんなことをした横綱がいただろうか?
包み隠さず素直に喜びや感謝を表現できる点においては最高の横綱であると言えるだろう。

今まで心技体の「心」が云々、と言われ批判を浴び続けていた横綱朝青龍。
しかし歴代の大横綱・北の湖、千代の富士、貴乃花などがそうしてきたように、
「周りの訳の分からない雑音をシャットアウトするには全勝優勝が一番」である。
この大鵬親方のコメントは実に重い。
「心技体が全部備わったからこそ全勝優勝ができた」という、
九重親方のコメントもありがたい。

今回の朝青龍の全勝優勝で、横綱の地位の重みと、日本のマスコミの程度の低さを再認識した気がする。

朝青龍が横綱に昇進してから一年。
この短いような長いような一年間のあいだに横綱本人も相撲協会も大相撲ファンも「横綱」という地位についてしみじみ考えさせられた。

来場所以降も頑張って、大横綱への道を歩み続けて欲しい。


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