大相撲コラムマニアックス☆第二回
「杉山邦博氏(元NHKアナウンサー)
の講演会レポ」


平成十六年二月二十九日、私は茨城県立図書館の視聴覚ホールで開催された、水戸生涯学習センター主催の講演会を聴講しに行った。

今回の講師は元・NHKアナウンサーの杉山邦博氏である。

杉山氏は平成六年まで大相撲放送の実況を担当した名アナウンサーで、大関貴ノ花(現・二子山親方)の引退時、

感極まって思わず絶句したことなどから、「泣きの杉山・泣かせの杉山」の異名をとったことでも有名で、

三代目若乃花(現タレント・花田勝)・貴乃花(現・貴乃花親方)の結婚式披露宴や、

大関小錦(現タレント・KONISHIKI)の断髪式の司会を務めるなど、角界関係者やその他業界人からの人望も厚い人である。

ところで当初この講演会は、三の丸庁舎(旧・茨城県庁)で開催される予定だったが、聴講希望者が予想以上の多数に及んだ為、

急遽隣の県立図書館で開催される運びとなった。

で、講演会の開始時、主催者である水戸生涯学習センターの代表らしき人が挨拶をしたのだが、……長い。

別に皆、生涯学習センターの沿革やら自慢やらを聴きたくて来た訳ではないのだから、さっさと終らせて欲しい。

しかも講師の杉山氏の名前を間違えるわ(「ひろくに」じゃなくて、「くにひろ」だよ)、

経歴紹介はただパンフレットの内容をなぞるだけだわ…。出てくるだけ時間の無駄である。

そんな時間があるならもっと杉山氏の話を聴かせて欲しいところだ。

まあ主催者へのクレームはさておき、本題に入ろう。

最初はまあ一応「生涯学習センター」の「講演会」ということで、相撲の歴史について丁寧に説明をして下さった。

「野見宿禰(のみのすくね)」や「回向院(えこういん)」など、大相撲通にとっては馴染みの深い単語が次々出てくる。

やはりアナウンサーだからといって、ただ実況が出来れば良いという訳ではなく、

そういった相撲の歴史もきちんと理解しているのが素晴らしいと思う。

さて、その次は朝青龍の話題である。

ここで杉山氏曰く、「大鵬も輪島も北の湖も、横綱になったばかりの若い頃はそりゃもう生意気で大変だった」そうだ。

「だから朝青龍もまだ日本に来て8年、大相撲の世界に入って6年弱、長い眼で見るべき」とのこと。

その意見には私も賛成だ。

またこういうことも仰った。「もう横綱なんだから自覚を持つべき」と「まだ若いし日本に来て日が浅いから」という、

「もう」と「まだ」の考え方を、横綱本人や周りの師匠や仲間、そしてファンもよく見直すべきだと。

そして「勝負師たる者、性格が小生意気なくらいでないと強くなれない」、

「性格が丸くなってきたらそれは引退が近い証拠、これは私の経験上ほぼそう間違いなく言える」そうだ。

細かい講演内容にすべて触れていてはキリがないのでこの辺にするが、

ステージ全体を使って「千代の山×若乃花の引分の取組」を再現したり、

平成四年の「貴花田×曙」戦の実況の再現、そして「安芸乃島のインタビュー」など、

思わずこちらも興奮してしまう臨場感溢れる、実に面白くためになる講演だった。

そして最後に心に刻み込まれた杉山氏の言葉は「国技大相撲は抑制の美学」というものである。

例え勝って嬉しくても、勝負が終ったら常に相手の身になって、謙虚な気持ちで心の高まりをぐっと堪える。

確かにそれは大変大事な事である。

実際今年初場所の朝青龍のガッツポーズなどもあった(でもこれは全勝優勝だしあの懸賞数だし私は「カッコイイ」と思うが)。

昔、逆鉾(現・井筒親方/寺尾の実兄)が横綱隆の里(現・鳴戸親方)を破った際に思い切りガッツポーズをして物議を醸したこともあった。

藤島親方(元関脇・安芸乃島)曰く、「相手に失礼のないようにする」ことは大切だし、見ていて美しいとも思う。難しい問題だ。

とにかく今回は、大相撲の歴史の生き証人の貴重な話を聴くことが出来て本当に良かった。


それにしても約二時間弱の講演の間、一切水も飲まずにしゃべり続けた杉山氏。さすがプロのアナウンサーである。


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