第六回 「カトちゃん革命?」
バンバンシャクシャク、バンシャクシャクっ(日本盛のCMより)。
というわけで今回はカトちゃんこと「高見盛」のお話。
今やお馴染み過ぎるほどお馴染みになった、制限時間一杯になったときの気合注入の儀式。
愚直なまでの相撲に対するひたむきさ。その独特なキャラクターで、今や角界ナンバー1の人気力士の高見盛。
相撲ファンだけでなく、一般の人にも受け入れられるようになった。
そして今まで相撲に興味のなかった人も相撲に感心を抱くきっかけを与えてくれている。
彼はもう、悩み多き今の相撲協会の救世主とも呼べる存在となった。
しかし、彼の爆発的な人気が全て角界にとってプラスに働くとは言い難いのも事実である。
それは後ほど触れるとしよう。
まず、例の気合の儀式。彼がこれを始めたのは平成十四年夏場所。怪我と闘い、再入幕を果たした場所からである。
実際、その場所の前に行われた春巡業に私は足を運んだが、その時はまだ、あんな動作をする力士は、いなかった(笑)。
そして翌場所、七月名古屋場所ではもう、私は彼の虜になっていた。
九月秋場所初日、私は国技館に足を運んだ。そのとき高見盛は結び前に、長期休場明けの横綱・貴乃花と取組を行った。
そのとき、館内のファンのほとんどは貴乃花に熱い声援を送っていたし、そのあまりにすごい歓声のため
中には「今日の相手(高見盛のこと)はかわいそうだなぁ、これ」という人もいた。
つまりそのときの高見盛の認知度・人気度はまだその程度だったのである。
ちなみに私はこのときも高見盛を応援していた。
そして、彼がこんな人気を得るとは思ってもみなかった。
で。高見盛が超絶人気力士になることの功罪とは何なのか?
まず、彼に送られる観客の声援により、「こいつには負けたくない」「俺のほうが強い」と
対戦相手やそれ以外の力士も闘志を前面に出すことにより、相撲内容が気迫溢れる、充実したものとなる。
そういった力士たちの己のプライドを賭けた闘いを目にすることにより、
お客さんも大喜び、ひいては相撲人気の回復につながる。
少なくとも、朝青龍や高見盛のおかげで、ここ数場所の土俵内容はひところに比べよくなっているし、
大変面白い。打っ棄りや吊り出しなど、一時期ほとんど見られなくなった技も、
最近ではそれぞれ一場所に数回見ることが出来るようになった。
こんなに面白いのにお客さんはあまり入らない。私は時々不思議だと思うのだ。
この理由としてはやはり、「最近の相撲は不人気だ」とことあるごとに吹聴しているマスコミにも多大な責任がある。
それはさておき、高見盛という存在は国技大相撲の切り札であるといえる。
しかし、カトちゃん本人が「なぜ自分みたいな男が人気があるのか分からない」というように、
人気だけが先行している感が多分にある。
CMやバラエティ番組への出演も大いに結構。私自身もカトちゃんの姿を観るのが楽しみでしょうがない。
だが、その出演のせいでタレント性が出来てしまい、相撲の「す」の字も知らないにわかファンが増えてしまった。
もちろん相撲に興味を持って頂くのは大変嬉しいし、そこから好角家になる人が増えればこんな素晴らしいことはない。
しかし、にわかファンが間違った方向で盛り上がるのはワールドカップや阪神優勝の際にも問題になったし、
気がつくとそういう連中に限ってさっさと醒めていることが多い。
実際に「にわか」高見盛ファンのせいで起きた騒ぎは。
今年九月場所前に彼が朝青龍のいる高砂部屋に出稽古に向かった際のこと。
朝青龍は高見盛のことをとことん可愛がった。竹刀も持ち出した。
それを見て「イジメだ」とか「人気のある力士に嫉妬しているんだ」とかアホなことをいう人が多かった。
マスコミの取り上げ方にも問題があったことは確かだが、「イジメ」と「可愛がり」の区別もつかないとはまあ、
おめでたい話である。
本当の大相撲ファンなら稽古の厳しさ、上位力士が下位力士を徹底的にしごく「可愛がり」と、
それにより強く成長した下位力士が本場所で上位力士を相手に善戦、或いは倒す「恩返し」…。
華やかな舞台の裏で行われている、泥臭く涙ぐましい光景。これを理解できて当然なはず。
これが分からないのはまだまだにわかファンか、ただのミーハーといえないだろうか?
「高見盛という人は大好きだけど、相撲はよく分からない」
そうおっしゃるあなた、本当に高見盛が好きならば、頑張って欲しいならば、
あなたも国技大相撲の精神、相撲道の何たるかを学ぶ努力をして下さい。
そうすれば、相撲はもっと楽しく、面白くなります。
手始めに気楽な気持ちで、国技館に訪れてみてはどうでしょう。決して敷居は高くないですから。
相撲協会の公式HPはここから行けますので。参考にして下さい。
最後に。タレントの松村邦洋が最近高見盛の真似をしていますが、アレはマジでやめて欲しい。
九月場所、北の湖理事長から「少し節度を」注意されたあの気合の儀式。
それにより、高見盛は少し悩んでいる模様。
また最初のうちは、その特徴の全てが受け入れられていた彼も、最近では「稽古場でもっと力を出せ」とか
「気合を入れるのはいいがその間対戦相手は待っているのだからもう少し配慮を」、周囲の見識も冷静になってきている。
段々人気力士にはつきものの「風当たり」が表れつつある。
こういった理事長の指摘や世論は人気と強さの代償だから仕方ないとはいえ、
芸人が冷やかし気味に物真似なんぞをすることで、高見盛の悩みに拍車を駆けてしまわないか。
もし、そういったストレスで自分の相撲が取れずまた怪我でもしてしまったらどうしてくれよう。
元気でひたむきな高見盛が見たい。それは大相撲ファン皆が望むことだろう。
そういうわけで、公共の電波で安易な物真似をするのはやめれ。
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